Archives

2016.03.22 : Essay

春の音連れ

ようやくの光の暖かさに蕾が解け息吹を感じる「音の春」になりました。
「春和景明」の日和です。

希望や不安が混ざった新しいスタートのこの季節。不透明な明日に途惑ったとき、そっと背中を押してくれる曲があります。「I’m Gonna Do It All」は荒唐無稽なことや、日常の些細なこと、子供のころに見た夢や理想の自分、日々の様々なことが大きな差もなくそばにあるように思われせてくれます。夢を持つことは、叶うことはなくても信じればきっとできると思い起こさせてくれるやさしいメロディに乗った歌です。

I’m gonna fly in a silver winged space rocket
I’m gonna pick out the stars and put them in my pocket
I’m gonna bring those stars back down
So I can spread celestial light around
I’m gonna do it all some day

You may not believe a word I say
But I tell you I’m gonna do it all some day
I’m gonna do it all some day

「I’m Gonna Do It All」はスコットランドのフォーク/シンガーソングライターのカリン・ポルワート(Karine Polwart)のアルバム「Scribbled In Chalk」(2006)にあります。アルバムジャケットは、沿道のビルの屋上近くの端を困り顔で歩く青い服の女性のイラストが印象的です。不安定でぎこちない時もハートに包まれ、暖かい光のさす車窓を眺め聴くと穏やかになれる、そんなアルバムです。
そして、流れる街並みにそっと「I’m Gonna Do It All」と唱えます。

b-piral_160322

2016.03.08 : Essay

ミモザ降る夜

福寿草、蝋梅、菜の花、サンシュユ、エニシダ、そしてミモザなど春を告げる花には黄色が多くみられます。まだ寒さの残る春の始まりに数少ない昆虫に気付いてもらうためで、黄色の花に誘われ蜂などが花粉を運びはじめます。

ミモザは枝垂れた枝いっぱいに華やかな黄色の小花が咲き、房となって風に揺れ、夜には光を放つように見えます。その様子にゴッホの「星降る夜」を思い起こしました。
「星降る夜」は南仏のアルルの夜、満天の星空ローヌ川の岸辺の風景画で、夜空の星、水面に伸びる街の灯りと揺らめく光、そして恋人たち、静けさの中に多くの物語を感じさせてくれます。深い夜に輝く星の鮮やかな黄色は、夜に映えるミモザのようです。

今日3月8日は国際女性ディー (International Women’s Day)、「女性の政治的自由と平等のためにたたかう」記念の日です。そしてイタリアではフェスタ・デッラ・ドンナ 「Festa della Donna(女性の日)」とされ、男性が日頃の感謝の気持ちを込めて女性にミモザを贈ることから「ミモザの日」ともいわれています。

b-piral_160308

2016.03.03 : Essay

ひなながし

雛祭りは、中国の五節句(「人日」「上巳」「端午」「七夕」「重陽」)の一つ「上巳(じょうし)の節句」に由来し、3月3日に水辺にて身を清め、穢れを祓う習慣がやがて日本にも伝来したもので、桃花節(とうかのせつ)とも言います。また、日本では、農耕儀礼として、3月初めに物忌み(ものいみ)をして、紙で作った人形(ひとがた)で身体をなでて、それを川や海に流して穢れを祓うという習慣がありました。曲水の宴と人形を水に流す風俗が融合し「流し雛」の原型となり、公家の女の子の雛遊びへと繋がります。

雛人形は源氏物語の世界のように煌びやかですが、源氏物語には雛(ひいな)遊びの様子がいくつか綴られており、須磨の巻には人形(ひとがた)を船に乗せ流した「雛流し」の様子が語られています。

『三月一日に出で来る巳の日、今日はかく思すことある人は御禊し給ふべきと、なまさかしき人のきこゆれば、海面もゆかしうて、出で給ふ。いとおろそかにぜむじょうばかりを引きめぐらして、この国にかよひける陰陽師めして払へさせ給ふ。舟に、ことごとしき人形のせて流すを見給ふに』

朧月夜との危険な恋が発覚し、愛する女性たちを京に残して須磨に退去した光源氏は、3月最初の巳の日、陰陽師を召して須磨の浜辺で禊=雛流しを行います。すると須磨は暴風雨に襲われ雷が鳴り稲妻は閃き続き、嵐はやまぬその夜明け前、光源氏の夢枕に海龍王が現れ、呼びかけられるという夢を見ます。そのお告げに光源氏は須磨を離れ明石に移り、その後、明石の御君との新たな恋が始まります。

春の漣に穢れを清めるこの日、罪や穢れを水に流す巳(ヘビ)は水の精で、この巳の日に厄払いがされます。新たなスタート「水に流す」そんな日なのかもしれません。

b-piral_160303

...34567...

このページのトップへ